秋や春の運動会シーズンが近づくと、朝の玄関で「学校に行きたくない」と泣き出したり、表情が暗くなったりするお子さんは少なくありません。運動会は学校行事の中でも特にエネルギーを必要とするイベントであり、運動会練習に行きたくないと感じる背景には、子どもなりの切実な理由が隠されています。
親御さんとしては、「少しくらい頑張らせた方がいいのではないか」「ここで休むと不登校になってしまうのでは」と不安になることもあるでしょう。しかし、無理をさせて心を痛めてしまう前に、まずは子どもの今の状態を正しく理解することが大切です。
この記事では、運動会の練習を負担に感じる子どもの心理や、家庭でできる具体的なサポート、学校との相談方法について詳しく解説します。お子さんの心を守りながら、この時期をどう乗り越えていくかを一緒に考えていきましょう。
運動会練習に行きたくないと感じる主な理由と子どもの心理

運動会の練習は、普段の授業とは全く異なる環境で行われます。お子さんが「行きたくない」と言うとき、そこには体力的、精神的、あるいは感覚的な苦痛が隠れていることが多いものです。まずは、どのような要因が子どもの負担になっているのかを整理してみましょう。
体力的・感覚的な負担(暑さ、音、疲労)
運動会の練習は、屋外で長時間過ごすことが多く、それだけで子どもたちの体力は激しく消耗します。特に近年の気候変動による暑さは、大人以上に子どもたちの体にダメージを与えます。体力が追いつかないことで、朝から体が重く、登校への意欲が削がれてしまうのです。
また、発達障害やHSP(感受性が強く敏感な気質)の傾向があるお子さんの場合、感覚過敏が大きなハードルになります。ピストルの音、大音量の音楽、拡声器を通した先生の声、砂埃、そして直射日光など、運動場の環境は刺激の塊です。これらの刺激が「痛い」と感じるほど苦痛な場合、練習はまさに苦行となってしまいます。
さらに、普段の生活リズムが崩れることも大きなストレスです。着替えの回数が増えたり、給食の時間がずれたりといった細かな変化が、見通しを立てるのが苦手な子にとっては大きな不安要素となります。こうした感覚的な苦痛は、周囲からは理解されにくいため、子ども自身も「わがままを言っている」と誤解されることを恐れて一人で抱え込んでしまうことがあります。
集団行動や「連帯責任」へのプレッシャー
運動会の練習では「列を揃える」「一斉に同じ動きをする」といった集団行動が厳しく求められます。特にダンスや組体操、行進の練習では、一人でも動きが遅れると全体が止まってしまうことがあり、これが「連帯責任」のような空気感を生み出すことがあります。この同調圧力が、繊細な子どもにとっては非常に重い負担となります。
先生が指導のために声を荒らげたり、友達から「ちゃんとやってよ」と急かされたりする場面が増えると、子どもは学校を「怖い場所」と認識するようになります。自分がミスをすることでチームが負ける、あるいは雰囲気を壊してしまうのではないかという恐怖心が、練習への拒否感につながるのです。
自由を好む子や、自分のペースを大切にしたいお子さんにとって、個性が封じ込められるような集団練習は苦痛以外の何物でもありません。みんなと同じように動くことが求められる環境が、自分の居場所をなくしているように感じてしまうことも少なくありません。
完璧主義や失敗への強い不安
真面目で責任感が強いお子さんほど、「ちゃんとやらなければならない」という思いに縛られ、運動会練習に行きたくないという心理状態に陥りやすい傾向があります。完璧主義的な傾向があると、まだ覚えていないダンスを人前で踊ることや、失敗する可能性がある競技に出場すること自体が、耐えがたい屈辱や不安に感じられます。
足が遅いことを気にしているお子さんにとって、徒競走の練習は自分の弱点をさらけ出す時間になってしまいます。順位がつくこと、それを大勢の保護者や児童に見られることに強いプレッシャーを感じ、自尊心が傷つくのを防ぐための防衛反応として「登校拒否」という形が現れることがあります。
このような不安は、「練習すればできるようになるよ」という励ましだけでは解消されません。子どもにとっては「できない自分」を想像するだけで足がすくむような恐怖を感じているため、その恐怖心に寄り添い、決して失敗を責めないという安心感を伝えることが必要です。
普段のルーティンが崩れることへのストレス
学校生活は、決まった時間割に基づいて動くことで、子どもたちに安心感を与えています。しかし、運動会練習期間に入ると、その時間割が大きく変更されます。5時間目までびっしり練習があったり、昼休みが削られたりすることもあり、子どもたちの日常のバランスが大きく崩れます。
自閉スペクトラム症(ASD)などの特性を持つお子さんの場合、予定の変更はパニックや強い不安の引き金になります。「次に何をすればいいのか分からない」という状態が続くことは、暗闇の中を歩かされているような不安を伴います。視覚的にスケジュールが示されない練習環境は、彼らにとって非常に不親切な場所に映るのです。
また、練習のために好きな授業(図工や音楽など)が削られてしまうことも、モチベーションの低下につながります。嫌な練習を我慢するための「楽しみ」が奪われてしまうことで、学校に行く理由そのものが見失われてしまうのです。
「休みたい」と言われた時に親が大切にしたい対応のステップ

お子さんが「運動会の練習があるから休みたい」と訴えてきたとき、親としてどう反応するかは非常に重要です。ここで頭ごなしに叱ったり、説得しようとしたりすると、子どもは心を閉ざしてしまいます。以下のステップに沿って、お子さんの気持ちに耳を傾けてみてください。
まずは子どもの言葉を否定せず受け止める
子どもが「行きたくない」と言ったとき、それは勇気を出して発したSOSです。まずは「そうなんだね、行きたくないんだね」と、その言葉を丸ごと受け止めてあげてください。解決策を提案したり、理由を問い詰めたりするのは後回しにして、まずはその感情を肯定することが大切です。
親が自分の気持ちを否定せずに聞いてくれたと感じるだけで、子どもの不安は少し軽減されます。「みんな頑張っているんだから」という言葉は、子どもをさらに追い詰め、自分はダメな人間だという自己否定感を強めてしまいます。まずは共感の姿勢を示すことで、信頼関係の基盤を作りましょう。
「辛い気持ちを分かってくれる人がいる」という安心感は、子どもが次の一歩を考えるための心のエネルギーになります。結論を急がず、まずは一緒にどんよりとした気持ちを共有する時間を持ちましょう。
何が嫌なのかを具体的に聞き出すコツ
気持ちが落ち着いてきたら、何が一番辛いのかを少しずつ聞いてみましょう。ただし、尋問のようにならないよう注意が必要です。「何が嫌なの?」と漠然と聞くのではなく、「暑いのがしんどいの?」「先生が怖いの?」「ダンスが覚えられなくて不安?」といったように、具体的な選択肢を出してあげると子どもは答えやすくなります。
ときには、子ども自身も何が嫌なのか言語化できていない場合があります。そのときは「なんとなくモヤモヤするんだね」「体が重い感じがするのかな?」と代弁してあげましょう。嫌なことの正体がはっきりすると、対策も立てやすくなります。
話を聞くときは、家事の手を止めて子どもの目を見るか、あるいは横に並んで座るなど、リラックスした雰囲気を作ってください。途中でアドバイスを挟まず、最後まで聞き切ることがポイントです。
【聞き出し方の例】
・「練習の中で、一番心が疲れちゃうのはどの部分かな?」
・「運動場にいるとき、どんな音が一番気になる?」
・「先生にどんなふうに言われると、悲しくなっちゃう?」
「甘え」ではなく「SOS」として捉える視点
「運動会くらいで休ませていたら、社会に出てから困る」という考えがよぎることもあるかもしれません。しかし、子どもの不登校や行き渋りの多くは、我慢の限界を超えた結果として現れるものです。「行きたくない」という言葉は、甘えではなく、これ以上頑張ると心が壊れてしまうという切実なサインです。
子どもの心には「エネルギーのバケツ」があると想像してみてください。運動会の過酷な練習や、慣れない集団行動によってバケツの水が溢れそうになっている状態です。ここでさらに無理を強いると、バケツそのものが壊れてしまい、回復までに長い時間を要することになります。
今の段階で適切に休ませたり、環境を調整したりすることは、長期的な不登校を防ぐための賢明な判断です。子どもの心を守ることは、将来の自立を妨げることではなく、むしろ健康な成長のために不可欠なステップであることを忘れないでください。
親自身の焦りや不安を整理する方法
子どもが学校を休むと、親も不安になります。「このまま不登校になったらどうしよう」「学校にどう説明すればいいのか」と頭を悩ませるでしょう。しかし、親の焦りは子どもに伝染し、さらに子どもを追い詰めてしまいます。まずは親自身が冷静になることが重要です。
運動会は、長い人生の中でのたった数日間のイベントに過ぎません。そのイベントに出られなかったとしても、お子さんの価値が下がるわけではありません。まずは「運動会に出ること」をゴールにするのではなく、「子どもの心身の健康」を第一優先に据えましょう。
親御さんも一人で抱え込まず、信頼できる友人や専門家に相談してください。スクールカウンセラーや自治体の相談窓口を利用するのも一つの手です。親が心の余裕を取り戻すことで、お子さんへの接し方も自然と柔らかくなり、家庭が安心できる場所として機能し始めます。
学校との相談で検討できる具体的な調整案と配慮のポイント

お子さんの苦痛の原因が見えてきたら、次は学校側と連携をとることが大切です。全てを我慢させるのでもなく、完全に諦めるのでもなく、その中間にある「今のわが子にできること」を探るために、具体的な調整案を提案してみましょう。
練習の一部参加や見学という選択肢
「全部出るか、全部休むか」の二択ではなく、部分的な参加を提案してみるのが効果的です。例えば、午前中の涼しい時間帯の練習だけ参加して午後は早退する、あるいは自分が特に苦痛を感じる競技の時間は見学させてもらうといった方法があります。
見学をする場合も、ただ座っているだけでは退屈したり罪悪感を感じたりすることがあるため、「記録係」や「道具出しの手伝い」など、何らかの役割を与えることで、集団の一員であるという意識を保ちつつ負担を減らすことができます。
学校側には「本人の負担を最小限にしながら、可能な範囲で参加させたい」という意向を伝えましょう。柔軟な対応をしてくれる先生であれば、子どもが安心できるポジションを一緒に考えてくれるはずです。
保健室登校や遅刻・早退の活用
運動場での練習がどうしても辛い場合、練習時間は保健室や図書室で過ごし、通常の授業の時間だけ教室に戻るという方法もあります。これを「別室登校」や「保健室登校」と呼びます。集団の喧騒から離れて静かな場所で過ごす時間を作ることで、心のエネルギーの消耗を抑えることができます。
また、朝一番の練習が辛いなら1時間遅れて登校する、あるいは練習が終わる頃に帰宅するといった遅刻・早退の活用も有効です。全てをこなそうとせず、お子さんが「これなら行けそう」と思える範囲にカスタマイズすることが大切です。
学校側には、お子さんの心身の状態を具体的に説明し、無理をさせると登校自体が困難になる可能性があることを正直に伝えましょう。事前にスケジュールを把握させてもらい、どの時間帯にどこで過ごすかを決めておくと、見通しが立ちやすくなります。
感覚過敏(音や光)への具体的な対策
感覚過敏が原因で運動会練習に行きたくない場合、具体的な道具を使って環境を調整することが可能です。最近では、大きな音を和らげる「イヤーマフ」や「デジタル耳栓」の使用を認めてくれる学校が増えています。また、日光が眩しい場合にはサングラスや、つばの広い帽子の着用を相談してみましょう。
砂埃が苦手ならマスクを二重にする、肌触りの良い体操服を選んで着せる(あるいは指定外のインナーを認めてもらう)といった工夫も考えられます。これらの配慮は、特性を持つ子にとっては「眼鏡をかけること」と同じくらい正当な権利です。
先生に相談する際は、「わがまま」ではなく「感覚的な苦痛を和らげるための合理的配慮」として伝えてください。必要であれば、医師の診断書や専門家の意見書を提出することで、学校側の理解を得やすくなります。
合理的配慮とは、障害のある人が他の人と平等に権利を行使できるように、個々の状況に合わせて行われる必要な調整のことです。現在は公立学校において義務化されています。
先生に伝える際の「伝え方」の具体例
学校へ相談する際は、対立するのではなく「協力して子どもを支えるパートナー」というスタンスをとることが重要です。最初から要求を突きつけるのではなく、まずは子どもの家での様子を伝え、先生が学校で気づいていることと照らし合わせることから始めましょう。
「家では練習の前後で泣いてしまい、食事も喉を通らない状態です。本人は頑張りたがっているのですが、このままだと学校自体が嫌いになってしまいそうで心配しています」というように、子どもの苦悩を具体的に共有します。
その上で、「例えば、音が苦手なのでイヤーマフの使用を許可していただけませんか?」や「ダンスの練習時間は見学させてもらうことは可能でしょうか?」と具体的な案を提示してください。代替案を親側から出すことで、先生も対応のイメージが湧きやすくなります。
無理をさせない判断基準と「不登校」へのつながりを考える

運動会を乗り切ることに必死になるあまり、お子さんの心の限界を見逃してはいけません。ときには「完全に休ませる」という決断が必要です。どのような状態になったらブレーキをかけるべきか、その基準についてお伝えします。
心身に現れる具体的なストレスサイン
子どもが言葉で「行きたくない」と言えなくても、体はサインを発しています。例えば、朝起きられなくなる、食欲が極端に落ちる、腹痛や頭痛を頻繁に訴える、夜驚(夜中に突然叫ぶ)や寝つきの悪さが見られるといった症状です。
また、イライラして家族に当たったり、今まで好きだった遊びに興味を示さなくなったりするのも、心のエネルギーが枯渇している証拠です。チック(瞬きが止まらないなど)や爪噛み、おねしょが復活するといった退行現象が現れることもあります。
これらのサインが複数見られる場合、それは単なる「気の持ちよう」で解決できる段階を過ぎています。心身の健康を損なってまで参加すべき行事はこの世に一つもありません。子どもの体が発しているサインを、何よりも優先して聞き取ってください。
運動会を欠席することのメリットとデメリット
運動会を欠席することに、大きな不安を感じるかもしれません。デメリットとしては、当日の思い出を共有できないことや、一時的な疎外感を感じる可能性があることが挙げられます。しかし、それ以上に「無理をさせて得られるもの」と「失うもの」を比較する必要があります。
無理に参加させて、結果的に学校への恐怖心が増大し、長期的な不登校になってしまうことは最大のデメリットです。逆に、勇気を持って休むことには、大きなメリットがあります。それは「親は自分のことを守ってくれる」という揺るぎない安心感と信頼を築けることです。
「辛いときは逃げてもいい」「自分を守っていい」という感覚は、生きていく上での大きな力になります。運動会に出られなかったという事実は、長い人生においては些細な出来事ですが、その時の親の対応は、子どもの自己肯定感に一生影響を与えます。
行事だけでなく日常の学校生活も見直す機会
運動会練習に行きたくないという訴えは、実は普段の学校生活で感じていた「小さな違和感」が表面化しただけかもしれません。練習という過酷な状況が引き金となって、今まで隠れていた対人関係の問題や学習への不安、先生との相性の悪さが浮き彫りになることがあります。
この機会に、お子さんが普段の授業や休み時間をどのように過ごしているのか、深く掘り下げて聞いてみるのも良いでしょう。運動会が終われば解決する問題なのか、それとも学校のシステム自体が今の本人にとって苦痛なのかを見極めるチャンスでもあります。
もし学校全体が負担になっているのであれば、運動会を機に登校の仕方を根本的に見直したり、環境を変えることを検討したりする時期に来ているのかもしれません。行事の騒動を単なる「一時的なこと」で済ませず、子どもの現在地を確認する指標にしましょう。
フリースクールなど学校以外の居場所を知っておく
「学校に行かない」という選択をした場合、その先の居場所がないと感じるのが一番の不安ですよね。しかし、現在は学校以外にも学びや育ちの場がたくさんあります。フリースクールやオルタナティブスクール、オンラインの学習支援など、多様な選択肢が存在します。
フリースクールでは、運動会のような一律の行事を強制されることは少なく、一人一人の興味やペースに合わせて活動が行われます。集団行動が苦手なお子さんでも、安心して自分らしく過ごせる場所が見つかるかもしれません。
運動会練習に行きたくないと悩んでいる段階で、こうした「学校以外の選択肢」があることを知っておくだけでも、親の心には余裕が生まれます。「最悪、学校じゃなくても大丈夫」という逃げ道を用意しておくことで、親子ともに追い詰められすぎずに済みます。
| 居場所の種類 | 特徴 |
|---|---|
| フリースクール | 民間の施設で、自由な校風。子どもの主体性を重視。 |
| 適応指導教室 | 教育委員会が設置。学校復帰を視野に入れた支援。 |
| オンラインスクール | 自宅から参加。対人関係の負担が少なく、学習が進めやすい。 |
| 家庭学習(ホームスクール) | 親や家庭教師と共に、自宅を拠点に学ぶスタイル。 |
運動会シーズンを乗り切るための家庭での環境づくり

学校での練習を避けることができない場合でも、家庭が最高の休息場所であれば、子どもはなんとか踏みとどまれることがあります。練習期間中、家をどのような環境にすべきか、具体的なポイントをまとめました。
十分な休息と睡眠を確保するための工夫
運動会の練習期間は、心身ともに極限まで疲れています。家庭では「何もしない時間」を意識的に作ってください。習い事をこの期間だけお休みにしたり、宿題の量を先生と相談して減らしてもらったりすることも検討しましょう。
特に睡眠の質は、ストレス耐性に直結します。寝る前のスマホやテレビを控え、リラックスできる環境を整えましょう。入浴剤を使ってゆっくりお風呂に入ったり、軽いストレッチをしたりするのも効果的です。疲労が溜まっていると感情のコントロールも難しくなるため、早寝を徹底することが大切です。
また、食事面でも胃腸に優しいものを選びましょう。ストレスが溜まると消化機能が落ちることがあるため、栄養バランスはもちろん、お子さんが「美味しい」と感じ、ホッとできるメニューを心がけてください。
家庭を「絶対に安心できる場所」にする
子どもが学校で戦っているとき、家は唯一のシェルターでなければなりません。家の中でまで「練習はどうだった?」「明日は行ける?」と学校の話ばかりされると、子どもは心が休まる暇がありません。家庭内では、あえて運動会の話題を避ける時間を作るのも一つの方法です。
親御さんは、努めて明るく、いつも通りに接してください。「学校に行っても行かなくても、あなたのことが大好きだし、価値は変わらない」というメッセージを、言葉や態度で伝え続けましょう。ハグやスキンシップを増やすことも、子どもの情緒を安定させるのに役立ちます。
「ここにくれば大丈夫」という安心感があれば、子どもは少しずつ自分を取り戻していきます。家の中ではわがままを言ってもいい、だらだらしてもいいという雰囲気を作り、心のエネルギーを充電させてあげてください。
運動会以外の楽しい予定をあえて入れない
練習期間中の土日や放課後に、お出かけやイベントの予定を詰め込むのは避けましょう。親としては「気分転換に」と思って連れ出したくなりますが、疲弊した子どもにとってはさらなるエネルギーの搾取になりかねません。
むしろ、週末は家で静かに過ごし、好きな本を読んだりゲームをしたりして、自分の好きな世界に没頭させてあげてください。外部からの刺激をシャットアウトし、自分のリズムを取り戻す時間が必要です。
また、運動会が終わった後の「ご褒美」をちらつかせて頑張らせるのも、逆効果になる場合があります。「これをやったら〇〇」という条件付きの頑張りは、さらに自分を追い込む原因になるからです。今はただ、今この瞬間の疲れを癒やすことに専念しましょう。
頑張りを結果ではなくプロセスで褒める
もしお子さんが少しでも練習に参加できたなら、その結果(ダンスが上手だった、足が速かったなど)ではなく、そこに至るまでの「葛藤」と「努力」を褒めてあげてください。「嫌だと思いながらも、玄関を出られたね」「見学だけでも学校に行けたのはすごいことだよ」といった言葉をかけます。
できないことに目を向けるのではなく、できている小さなことに光を当てます。たとえ当日お休みすることになっても、「自分の気持ちを正直に伝えて、自分を守る決断ができたね」と、その判断を尊重してあげてください。
親が自分のプロセスの理解者であると感じられたとき、子どもは失敗への恐怖を少しずつ克服していきます。結果がどうあれ、自分は認められているという確信が、次の一歩を踏み出す勇気の源になります。
【褒め方のバリエーション】
・「朝、辛いのに顔を洗って準備したこと、お母さんは見ていたよ」
・「自分の今の気持ちをちゃんと言葉にして教えてくれてありがとう」
・「今日は一時間だけ頑張ってみたんだね。そのチャレンジがかっこいいよ」
まとめ:運動会練習に行きたくない気持ちを尊重し、子どもの心を守ろう
運動会練習に行きたくないというお子さんの訴えは、単なるわがままではなく、心と体からの真剣なSOSです。その背景には、感覚的な過敏さ、集団行動へのプレッシャー、完璧主義な性格、そして日常の崩れに対する不安など、複雑な要因が絡み合っています。
親御さんにできる最も大切なことは、お子さんの気持ちを否定せず、「どんなときでもあなたの味方である」という安心感を与えることです。学校への参加の形は、決して「100か0か」ではありません。部分的な見学、遅刻登校、道具を使った環境調整など、お子さんの苦痛を減らすための工夫を学校と一緒に探っていきましょう。
もし無理をさせて心身に深刻なサインが出ているのであれば、思い切って休ませる勇気を持ってください。運動会に出られないことは、人生における失敗ではありません。むしろ、自分の限界を知り、周囲に助けを求め、自分を大切にする方法を学ぶ貴重な機会となります。学校以外の選択肢や、不登校・フリースクールという道があることも、心の片隅に置いておいてください。お子さんの健やかな心が、何よりも優先されるべき宝物なのです。



