不登校のお子さんを持つ保護者の方にとって、学校に行けない期間の「出席」がどう扱われるかは非常に大きな関心事ではないでしょうか。学校以外の居場所としてフリースクールを選択する場合、一定の条件を満たすことで「学校に出席した」とみなされる制度があります。
文部科学省(文科省)は、不登校の子どもの多様な学びを支援するため、フリースクール等での学習を出席扱いとする方針を以前から示しています。しかし、その具体的な要件や手続きについては、複雑でわかりにくいと感じる方も少なくありません。
この記事では、フリースクールにおける出席扱いの要件や文科省の指針、具体的な手続きの流れ、さらにはICTを活用した自宅学習のケースについても、やさしく丁寧に解説します。お子さんの状況に合った最適な学びの形を見つけるための参考にしてください。
フリースクール出席扱い要件の基本と文科省の考え方

不登校の状態にあるお子さんがフリースクールに通う際、学校の校長先生の判断によって、その活動を「出席」としてカウントできる仕組みがあります。まずは、なぜこのような制度があるのか、文科省がどのような姿勢で不登校支援に取り組んでいるのかを整理しましょう。
なぜフリースクールが出席扱いになるのか
かつての不登校支援は、何よりも「学校に戻ること(学校復帰)」を唯一のゴールとしていました。しかし、無理に登校を促すことでお子さんの心がさらに傷ついてしまうケースも多く、支援の在り方が見直されるようになったのです。
現在、文科省は不登校を「どの子にも起こりうるもの」として捉えています。そのため、学校という枠組みだけに縛られず、フリースクールなどの民間施設での学びも、適切な指導が行われているのであれば学校教育を補完するものとして認めようという考え方が主流になりました。
出席扱いが可能になった背景には、学校以外の場所でお子さんがエネルギーを蓄え、社会とのつながりを維持することを肯定的に捉える姿勢があります。これにより、不登校期間が「空白の期間」ではなく「学びの期間」として評価されるようになったのです。
文科省が定める「社会的な自立」という目標
文科省が不登校支援において掲げている最大の目標は、学校への復帰そのものではなく「社会的な自立」です。お子さんが将来、自分らしく社会の中で生きていくための力を育むことが何よりも優先されます。
この考え方は、2016年に成立した「教育機会確保法」や、2019年(令和元年)に出された文科省の通知によって明確にされました。通知の中では、不登校児童生徒の支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではないと明記されています。
フリースクールでの活動が出席扱いとして認められるのは、その活動がお子さんの自立を助け、学びを継続させていると判断されるからです。学校外での多様な学びが、子どもの成長にとって価値あるものだと国が正式に認めている点は、保護者にとっても大きな安心材料となります。
校長先生の判断が重要視される理由
フリースクールでの活動を出席扱いにできるかどうかを最終的に決定するのは、お子さんが在籍している学校の校長先生です。これは、学校教育法において児童生徒の出欠確認や指導要録の管理責任が校長に委ねられているためです。
文科省が示したガイドラインはあるものの、個々のケースに応じて「その施設がお子さんにとって適切か」「学習内容が充実しているか」を校長が個別に判断します。そのため、全国一律で「このフリースクールなら自動的に出席扱い」となるわけではありません。
一見すると厳しく感じるかもしれませんが、これは学校とフリースクールがお子さんの成長のために連携を深めるための仕組みでもあります。校長先生に相談し、お互いの信頼関係を築くことが、出席扱いを実現するための第一歩となります。
指導要録とは:生徒の学習状況や出席状況を記録する公的な書類のことです。出席扱いが認められると、この書類の出席日数にカウントされます。
出席扱いを受けるために満たすべき具体的な7つの要件

文科省が平成15年、および令和元年に出した通知では、フリースクールなどの学校外の施設で指導を受ける際、出席扱いを認めるための要件が具体的に示されています。ここでは、特に重要となる7つのポイントを詳しく見ていきましょう。
保護者と学校との間に十分な連携があること
出席扱いの要件としてまず挙げられるのが、学校と保護者の間で十分な協力体制ができていることです。学校側がお子さんの現状を把握し、フリースクールでの活動を支援することに同意している必要があります。
具体的には、定期的にお子さんの様子を情報共有したり、今後の進路について相談したりする場を設けることが求められます。学校を完全に切り離すのではなく、学校という所属を残しながら外部で学ぶという姿勢が大切です。
この連携があることで、学校側も「お子さんが今どこで何をしていて、どのような努力をしているのか」を正確に把握できます。保護者の方が窓口となり、学校とフリースクールの橋渡し役を務めることが、スムーズな承認につながります。
フリースクール側から学校へ適切な報告が行われること
出席扱いを継続するためには、フリースクールでの活動状況を学校に証明する必要があります。ただ通っているという事実だけでなく、どのようなプログラムに参加し、どのような様子だったかを学校に伝えなければなりません。
多くの場合、フリースクールから学校へ「月間活動報告書」のような形で書類が提出されます。これには、本人の出席日数はもちろん、学習の進み具合や対人関係の様子などが記載されます。
施設が適切な相談・指導を行っていると認められること
出席扱いの対象となる施設は、公的な教育センター(適応指導教室)だけでなく、民間のフリースクールも含まれます。ただし、その施設が「お子さんの社会的自立を助けるための適切な指導」を行っていることが条件です。
文科省の指針では、個別の相談活動や学習支援、集団生活への適応指導などがバランスよく行われているかが問われます。また、施設に専門的な知見を持つスタッフがいるか、安全面が確保されているかといった点も考慮されます。
学校側がその施設を知らない場合、パンフレットやウェブサイトの情報を提出したり、時には校長先生や担任の先生に施設を見学してもらったりすることもあります。「遊びの場」としてだけでなく「学びと成長の場」であることを示すことがポイントです。
通所が困難な場合のICT活用に関するルール
心身の状態や地理的な理由により、フリースクールに毎日通うことが難しいケースもあります。そのような場合、インターネット(ICT)を活用した学習も出席扱いとして認められる可能性があります。
これには「ICTを活用した学習活動」に関する別個の要件があり、双方向性のあるやり取りが行われているか、学習内容が学校の教育課程と関連しているかなどがチェックされます。フリースクールがオンライン授業を提供している場合も、この要件が適用されます。
自宅でタブレットを使って学習したり、オンライン上のフリースクールに参加したりすることも、現代では立派な「出席」の形態として認められつつあります。お子さんの外出が難しい場合は、このICT活用のルールも検討に含めてみてください。
【文科省が示す出席扱いの主な要件まとめ】
1. 保護者と学校の間に十分な連携がある
2. 適切な相談・指導が行われている施設である
3. 社会的自立を目的としている
4. 学校側が活動内容を定期的に把握できる
5. 本人が学校外での指導を希望している
出席扱いが認められることによるメリットと注意点

フリースクールでの活動が出席扱いになると、お子さんや保護者の方にとってどのような変化があるのでしょうか。心理的な側面と、制度面の両方から得られるメリットを解説します。また、あわせて知っておきたい注意点についても触れておきます。
子どもの心理的なプレッシャーが軽減される
不登校のお子さんの多くは、「みんなが学校に行っている時間に自分は行けていない」という強い罪悪感や焦燥感を抱えています。出席日数が足りないという事実は、彼らにとって自分を否定する大きな要因になりかねません。
出席扱いが認められることで、「自分は学校を休んでいるダメな子」ではなく、「別の場所で自分のペースで頑張っている生徒」という肯定的な自己イメージを持ちやすくなります。これは心の回復において非常に大きな意味を持ちます。
「今日は学校をお休みした」ではなく「今日はフリースクールに出席した」と言えるようになることで、親子の会話からもトゲが抜け、家庭内の雰囲気が穏やかになることも珍しくありません。お子さんの尊厳を守るための有効な手段となります。
進路選択や高校入試における内申点への影響
実務的な最大のメリットは、進路選択への好影響です。中学校での出席日数は、高校入試において重視されるポイントの一つです。不登校で出席日数が極端に少ない場合、受験できる学校が限られてしまうという不安があります。
フリースクールで出席扱いが認められれば、指導要録上の出席日数が確保されます。これにより、全日制高校を含む多くの学校が受験対象となり、お子さんの将来の選択肢を広げることができます。
また、出席扱いと同時に、フリースクールでの学習成果が評価され、内申点(調査書)に反映されるケースもあります。もちろん学校側の判断によりますが、「頑張りを正当に評価してもらえる」という仕組みは、お子さんの学習意欲を支える原動力になるでしょう。
全てのフリースクールが対象ではないという現実
ここで注意しなければならないのは、世の中にある全てのフリースクールが「出席扱い」に対応しているわけではないという点です。施設の運営方針や活動内容によっては、学校側が要件を満たしていないと判断することもあります。
例えば、学習要素が全くなく、単に居場所として提供されているだけの場合や、学校との連携を拒否している施設などは、出席扱いが認められにくい傾向にあります。また、施設側が事務的な手間を理由に報告書の作成を断るケースも稀に存在します。
出席扱いを希望する場合は、フリースクールを探す段階で「出席扱いの実績があるか」「学校への報告書作成に対応してくれるか」を必ず確認するようにしましょう。事前確認を行うことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
学校復帰だけがゴールではないという共通認識
出席扱い制度を利用する際、忘れてはならないのが「これは学校に戻るための準備期間だけのものではない」ということです。文科省の指針にある通り、目的はあくまでもお子さんの社会的自立にあります。
稀に、学校側が「出席扱いを認めるのだから、いつかは学校に戻ってきてね」という強いプレッシャーをかけてしまうことがあります。しかし、それではお子さんの心が再び追い詰められてしまいます。
「フリースクールという学びの場が、今のこの子にとってのメインステージである」という認識を、学校・保護者・本人の三者で共有しておくことが大切です。出席扱いは、今の居場所を肯定するための制度であるべきなのです。
実際に手続きを進めるための具体的なステップ

フリースクールでの出席扱いを目指す際、具体的にどのような手順で進めればよいのでしょうか。学校側との交渉や準備すべき書類など、現実的なアクションプランをまとめました。焦らず一歩ずつ進めていきましょう。
まずは担任の先生や学年主任に相談する
最初のステップは、在籍している学校への相談です。いきなり校長先生に直談判するのではなく、まずは担任の先生や学年主任、スクールカウンセラーに「フリースクールでの活動を出席扱いにしたいと考えている」と伝えましょう。
相談の際には、お子さんが現在どのような状態で、なぜそのフリースクールを選んだのかを丁寧に説明します。学校側もお子さんのことを心配していますので、「前向きに活動しようとしている」という意欲を伝えることが大切です。
この際、文科省がフリースクール等の出席扱いを推進していることを知っている先生ばかりとは限りません。必要に応じて、文科省の通知文のコピーを持参するなど、制度について一緒に確認する姿勢を持つと話がスムーズに進みます。
フリースクール側に「出席扱い」の希望を伝える
学校側の感触が良ければ、次にフリースクール側へ出席扱いの希望を伝えます。多くのフリースクールでは既に対応に慣れていますが、初めてのケースとなる施設の場合は、どのような協力が必要かを説明する必要があります。
主に依頼するのは、「活動報告書の作成」と「学校との定期的な連絡」です。フリースクールによっては、指定の書式を持っている場合もあれば、学校側が用意した書式に記入する形をとる場合もあります。
また、フリースクールのスタッフに、学校の担任の先生と一度面談や電話連絡をしてもらうよう依頼するのも効果的です。教育のプロ同士が直接話をすることで、学校側の安心感は格段に高まります。
学校とフリースクールの橋渡し役を意識する
手続きが進み始めたら、保護者の方は「情報のリレー」を意識してください。学校とフリースクールが直接やり取りをすることもありますが、基本的には保護者がハブ(中心)となって情報を整理するのが一般的です。
「学校の先生がこんなことを言っていた」「フリースクールでは最近こんな変化があった」という情報をこまめに共有します。これにより、三者の信頼関係が深まり、出席扱いの認定が継続しやすくなります。
| ステップ | 主なアクション | 注意点 |
|---|---|---|
| 1. 準備 | フリースクールの資料を集める | 出席扱いの対応可否を確認する |
| 2. 学校相談 | 担任やカウンセラーに意向を伝える | 文科省の指針を共有する |
| 3. 施設連携 | フリースクールに報告書作成を依頼 | 学校側の要望を施設に伝える |
| 4. 認定 | 校長による判断・決定 | 認められた条件を再確認する |
| 5. 運用 | 定期的な報告書の提出と面談 | 変化があれば都度学校へ報告 |
自宅学習でも出席扱いになる?ICT等を利用した最新の基準

近年、特に注目されているのが「自宅でのICT学習による出席扱い」です。フリースクールへ通うことさえハードルが高いお子さんにとって、自宅が学びの場として認められることは非常に大きな救いとなります。ここでは文科省が定める最新の基準を解説します。
令和元年の文科省通知による方針の転換
文科省は2019年(令和元年)10月、不登校児童生徒が自宅でICT等を利用して学習した場合の出席扱いの要件を緩和・整理する通知を出しました。これにより、以前よりも柔軟に自宅学習が出席扱いとして認められる道が開かれました。
この方針転換の背景には、不登校の要因が多様化し、無理な外出が必ずしも解決につながらないという理解が深まったことがあります。また、タブレット学習やオンライン指導の質が向上し、学校の授業に代わる学びが可能になったことも大きな要因です。
現在では、「家から出られないこと」を否定的に捉えるのではなく、その場をどう有効な学びの場に変えていくかという視点が重視されています。自宅での努力が公的に認められる時代になったのです。
自宅学習が出席扱いになるための5つの要件
自宅でのICT学習を出席扱いにするためには、以下の要件を満たす必要があります。フリースクール通所の場合と似ていますが、より「学習内容」に焦点が当てられています。
1. 保護者と学校の間に十分な連携があること。
2. ICTや郵送、電話などの手段を用いて、計画的な学習が行われていること。
3. 校長が、その学習が学校の教育課程に照らして適切であると判断すること。
4. 対面指導やオンラインでのやり取りなど、指導者による支援が継続的に行われていること。
5. 最終的に学校復帰や社会的自立を目指すものであること。
特に重要なのは、単に動画を視聴するだけでなく、指導者(フリースクールのスタッフや塾の講師、民間教材のアドバイザーなど)との双方向のやり取りがあるかという点です。学習の進捗を誰かが確認し、フィードバックを行っていることが求められます。
民間企業の学習ツールを活用するケース
最近では、出席扱い制度に対応した学習アプリやオンライン教材を提供する民間企業が増えています。これらのツールは、学習データが自動的に記録され、そのまま学校への提出用レポートとして出力できる機能を持っているものもあります。
こうした教材を利用する場合、フリースクールがそのツールを導入して指導を行っていることもあれば、家庭で個人的に契約している場合もあります。いずれにせよ、学校側に対して「どのような教材を使い、誰がどのようにサポートしているか」を明確に提示することが必要です。
「すらら」などのデジタル教材は、多くの自治体や学校で出席扱いの実績があります。まずは利用を検討しているツールに、不登校支援や出席扱いのサポート体制があるかを確認してみることをおすすめします。
ICTとは:Information and Communication Technologyの略で、情報通信技術のことです。タブレット学習やオンライン会議システムなどを使った学習を指します。
まとめ:フリースクールの出席扱い要件を理解して子どもの未来を広げよう
不登校という状況の中で、お子さんがフリースクールという新しい居場所を見つけることは、大きな一歩です。そして、その活動を出席扱いとして認めてもらうことは、お子さんの自己肯定感を高め、将来の選択肢を守ることにつながります。
文科省が示す出席扱いの要件は、決して「学校に戻ること」を強要するものではありません。あくまでもお子さんの現在の頑張りを認め、社会的な自立を支援するための仕組みです。校長先生の判断が重要となるため、学校との丁寧なコミュニケーションが欠かせませんが、それは決してお子さんを追い詰めるためのものではなく、適切なサポートを構築するための対話であるべきです。
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
・文科省は学校外での学びを「社会的自立」のための大切な活動として認めている。
・出席扱いの最終決定権は校長先生にあるため、学校との連携が不可欠。
・フリースクールからの定期的な活動報告が、出席認定の根拠となる。
・出席扱いになることで、内申点の確保や心理的な負担軽減といったメリットがある。
・近年はICTを活用した自宅学習も、一定の要件を満たせば出席扱いとして認められる。
お子さんにとって、学校以外の居場所が「逃げ場」ではなく「学びと成長の場」であると公的に認められることは、何物にも代えがたい勇気になります。制度を正しく理解し、学校やフリースクールと協力しながら、お子さんが安心して歩んでいける環境を整えていきましょう。




