お子さんがフリースクールに通い始めたものの、そこでも「ゲームばかりしている」という姿を目にすると、親御さんとしては複雑な心境になりますよね。「せっかく月謝を払って通わせているのに」「勉強はしなくていいの?」と不安を感じるのは、親として当然の反応です。
学校に行けない時期を経て、ようやく見つけた居場所。そこでゲームに没頭する時間は、一見すると停滞しているように見えるかもしれません。しかし、不登校を経験した子供たちにとって、フリースクールでのゲームの時間は、心の回復や社会復帰に向けた大切なステップであることも多いのです。
この記事では、フリースクールでゲームばかりしている状況がなぜ「大丈夫」と言えるのか、その背景にある心理や得られるメリットについて詳しく解説します。今の状況をどう捉え、どう見守ればよいのか、具体的なヒントをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
フリースクールでゲームばかりでも大丈夫と言える3つの大きな理由

親御さんからすれば「ただ遊んでいるだけ」に見えるゲームの時間も、不登校の状態にある子供にとっては、それ以上の意味を持っています。まずは、なぜゲームばかりの生活を頭ごなしに否定しなくて良いのか、その根底にある理由を理解していきましょう。
子供がゲームに没頭するのは、心がエネルギーを蓄えている証拠でもあります。焦らずにそのプロセスを認めてあげることが、次のステップへ進むための土台となります。
心のエネルギーを急速に回復させる「完全な休養」
不登校になるまでの過程で、子供たちは学校という集団生活の中で心身を削り、疲れ果てています。多くのフリースクールがゲームを許可しているのは、そこが子供にとって「安心できる避難所」であることを実感してもらうためです。
何かに没頭できる時間は、嫌なことや不安を忘れさせてくれる、いわば心の点滴のような役割を果たします。ゲームを通じて「楽しい」という感情を思い出すことは、失われた自己肯定感を取り戻すための第一歩です。この時期をしっかり過ごすことで、次第に外の世界への興味が湧いてくるようになります。
逆に、この回復期に無理に勉強をさせようとすると、子供はさらに心を閉ざしてしまう恐れがあります。ゲームばかりしている時期は、心が「これ以上頑張れない」と悲鳴を上げた後の、必要なメンテナンス期間だと捉えてみてください。
自分の意思で活動を選ぶ「自己決定権」の行使
学校生活では、時間割や校則によって「やらされること」が中心です。不登校の子供たちの多くは、自分の気持ちを押し殺して周囲に合わせ続けた結果、自分が何をしたいのかが分からなくなっています。
フリースクールで「今日はゲームをする」と自分で決めることは、小さなことのように見えて、実は非常に重要な訓練です。自分で決めたことを尊重される経験を積み重ねることで、子供は「自分の人生を自分でコントロールしている」という感覚を取り戻していきます。
この「自己決定」の積み重ねが、将来的に「次はこれを学んでみたい」「アルバイトに挑戦してみようかな」という主体的な行動へとつながっていきます。ゲームはそのための、最もハードルの低い練習台なのです。
共通の話題を通じた「緩やかな社会性」の構築
不登校になると、同年代とのコミュニケーションが途絶えてしまいがちです。しかし、ゲームという共通言語があれば、初対面の人やスタッフとも自然に会話が生まれます。フリースクールでは、ゲームを媒介にして人間関係を築いていく子がたくさんいます。
一人で黙々とプレイしているように見えても、実際には横で誰かがプレイしているのを見たり、時々アドバイスを交わしたりするだけで、子供は「集団の中にいても自分は安全だ」という感覚を学びます。これは高度な社会復帰のトレーニングです。
無理に会話を強要されず、好きなものを中心に他者と関われる環境は、対人不安を抱える子供にとって非常に優しい設計です。ゲームがきっかけで友達ができ、そこからゲーム以外の活動に広がっていくケースは決して珍しくありません。
なぜ子供はこれほどまでにゲームに没頭するのか?その心理的背景

子供がゲームにのめり込むのには、ゲーム自体の面白さ以外にも、心の隙間を埋めるための切実な理由が隠されています。単なる「遊び」として片付けるのではなく、子供がその瞬間に何を感じているのかを想像してみましょう。
現実世界のストレスや不安からの「一時的な避難」
不登校の子供は、学校に行けない自分に対して強い罪悪感を抱いていたり、将来への漠然とした恐怖に怯えていたりすることがあります。現実の世界が苦しすぎるとき、ゲームは一時的にその苦しみから逃れさせてくれるシェルターのような役割を果たします。
ゲームの画面に集中している間だけは、余計なことを考えずに済みます。この「思考を停止させる時間」がなければ、心がパンクしてしまう子もいるのです。親御さんから見れば「サボっている」ように見えても、本人にとっては「生き延びるための防衛反応」である可能性があります。
まずは、子供がゲームを通じて自分自身を守っているのだという視点を持ってみてください。現実を直視できるようになるまでには、それなりの充電期間が必要なのです。
努力が数字やランクで可視化される「達成感」
学校の勉強やスポーツでは、努力してもすぐに結果が出るとは限りません。しかし、ゲームの世界では「1時間プレイすればレベルが上がる」「敵を倒せばアイテムが手に入る」といったように、報酬が明確で即時的です。
自信を失っている子供にとって、この「自分はできる」という感覚は何物にも代えがたいものです。ランクが上がったり、難しいステージをクリアしたりすることで、傷ついた自己肯定感を補おうとしているのです。
ゲーム内での成功体験は、子供の心に小さな自信の種を植えてくれます。そのエネルギーが溜まってくれば、いずれ現実世界の課題にも向き合えるようになります。今はゲームの世界で「勝つ喜び」を存分に味わわせてあげましょう。
オンライン上で得られる「他者からの承認と繋がり」
現代のゲームは、多くがオンラインで他者とつながる機能を持っています。協力プレイで誰かの役に立ったり、上手なプレイを褒められたりすることは、子供にとって「自分には価値がある」と実感できる貴重な機会です。
学校という狭いコミュニティで居場所を失った子供にとって、オンラインの世界は広大で、自分の居場所を見つけやすい場所でもあります。顔の見えない相手だからこそ、素直に自分を出せるという子も少なくありません。
「ゲームの中だけでの付き合い」と思われがちですが、そこで交わされるコミュニケーションも一つの対人スキルです。誰かに必要とされる経験が、外の世界へ一歩踏み出すための勇気になるのです。
ゲームを通じて身につく、将来役立つ意外な「生きる力」

「ゲームばかりで勉強が遅れる」と心配されるかもしれませんが、実はゲームからは現代社会で求められる多くのスキルを学ぶことができます。教育的な側面からゲームを捉え直すと、少し安心できるかもしれません。
最近では「eスポーツ」として認知が進んでいるように、ゲームは単なる娯楽ではなく、戦略的思考や集中力を養うトレーニングの一環としても注目されています。
複雑な問題を解決するための「論理的思考力」
最近のゲームは非常に複雑で、ただボタンを押していればクリアできるものは少なくなっています。どうすれば勝てるのか、効率よく進めるにはどうすべきかという「戦略」を立てる必要があり、これはまさにプログラミング的思考に通じるものです。
失敗しても原因を分析し、何度も挑戦して解決策を見つけるプロセスは、現実の仕事や研究でも極めて重要な能力です。ゲームに没頭している子供の頭の中では、驚くほど高度な計算や推論が行われています。
「攻略サイトを見て学ぶ」「効率を追求する」といった行動も、情報収集能力やリサーチ能力の一種です。これらの力は、将来的に仕事の現場でもそのまま応用できる貴重な財産となります。
オンラインでの「多人数協力とコミュニケーション」
チーム戦を行うゲームでは、仲間との連携が不可欠です。ボイスチャットやテキストチャットを使って、役割分担を決めたり指示を出したりする経験は、組織で働く際のチームワークの基礎になります。
時には意見がぶつかることもありますが、共通の目的のために妥協点を探ったり、励まし合ったりする経験は、リアルな人間関係と同じくらい深い学びがあります。ネットマナーを身につけるのも、この実体験を通じてです。
学校の教室という限定的な空間ではなく、多様な属性の人が集まるオンライン空間で揉まれることは、ある意味で非常に実戦的な社会教育を受けていると言えるでしょう。
最新技術への抵抗感をなくす「高いITリテラシー」
ゲームをしていると、自然とパソコンやタブレット、インターネット環境に詳しくなります。ソフトのインストール、通信環境の調整、SNSでの情報交換など、今の時代に欠かせないITスキルを遊びながら習得しているのです。
また、海外のプレイヤーと対戦するために簡単な英語を覚えたり、ゲームの映像からグラフィックデザインに興味を持ったりすることもあります。ゲームは、最新のテクノロジーや文化に触れるための入り口としての役割も果たしています。
「ゲームは時間の無駄」という価値観は、すでに過去のものになりつつあります。デジタルに強いということは、将来のキャリア形成において強力な武器になることは間違いありません。
親が抱く「ゲーム依存」への不安とどう向き合うべきか

それでもやはり、昼夜逆転して食事も取らずにゲームをしている姿を見ると、「依存症ではないか」と不安が募りますよね。ここでは、不安を解消するための判断基準と、親としての心構えについて整理します。
「ゲームばかり」という現状だけでなく、その背景にある子供の健康状態や心の変化に目を向けてみましょう。依存を疑う前に、対話の窓口を閉ざさないことが大切です。
「熱中」と「依存」を見分けるためのポイント
単に長時間プレイしているからといって、即座に「病的な依存」とは言えません。ポイントは、日常生活にどの程度支障が出ているか、そして本人が「コントロールしたいのにできない」と苦しんでいるかどうかです。
例えば、フリースクールにはなんとか行けている、最低限の食事や睡眠は取れている、家族との会話は成り立つ、という状態であれば、それは依存というより「必要な熱中」である可能性が高いです。逆に、ゲームができないと激しいパニックになる、身体に異常が出てもやめられない、という場合は専門家の助けが必要になります。
まずはフリースクールのスタッフに、スクール内での様子を聞いてみてください。親の目がない場所では、意外とバランスを保っていたり、他の子と交流していたりすることもあります。
家庭内でのルールは「制限」ではなく「合意」で決める
無理やりゲームを取り上げたり、Wi-Fiを切ったりする強硬手段は、親子関係を修復不能なほど悪化させる危険があります。不登校で居場所を失っている子供にとって、ゲームまで奪われることは「存在の否定」に近い衝撃を与えます。
ルールを作るなら、親が一方的に押し付けるのではなく、子供の言い分も聞いた上で「お互いが納得できる落とし所」を探りましょう。「1日○時間」といった厳格な制限よりも、「夜○時以降は寝る準備をする」「食事は一緒に食べる」といった生活リズムに関する緩やかな約束から始めるのがコツです。
子供が「自分の居場所を守るために協力しよう」と思えるような、建設的な話し合いを心がけてください。信頼関係があれば、子供は自ずとブレーキをかけるようになります。
親自身の「不安の正体」を見つめ直す
親が不安になる理由の多くは、実は子供の状態そのものよりも、「世間体」や「将来への不透明さ」にあることが多いものです。「近所にどう思われるか」「このまま引きこもりになったらどうしよう」という親自身の不安を、子供にぶつけていないでしょうか。
子供は親の不安を敏感に察知します。親がピリピリしていると、子供はさらにゲームの世界に閉じこもってしまいます。まずは親御さん自身が、同じ悩みを持つ親の会に参加したり、カウンセリングを受けたりして、自分の心を整えることが大切です。
「今はゲームをしていても、この子の人生がダメになるわけではない」と腹をくくることができれば、子供を見守る眼差しも優しくなり、それが子供の安心感に繋がります。
フリースクールでの過ごし方が自然と変化するタイミング

ゲームばかりの時期は、永遠に続くわけではありません。心が十分に満たされ、安心感が定着すると、子供は少しずつゲーム以外の活動に目を向けるようになります。その変化の兆しを見逃さないようにしましょう。
「ゲーム以外の何かに興味を持つ」瞬間を見逃さない
ある日突然、ゲームの手を止めてスタッフの手伝いを始めたり、他の子がやっているスポーツや工作をじっと見つめていたりすることがあります。それが変化のサインです。興味が外に向き始めた証拠と言えます。
ここで親や周囲が「やっとゲームをやめたわね!」と大げさに喜んだり、無理にその活動を勧めたりするのは逆効果です。子供がプレッシャーを感じて、またゲームの世界に戻ってしまうからです。
あくまで自然に、さりげなく。「それ、面白そうだね」くらいの軽い肯定で十分です。子供が自分から「やってみたい」と言うのを、焦らずじっくり待ってあげましょう。
人間関係の広がりがゲームの時間を上回る
フリースクールでの友達付き合いが深まってくると、ゲームをしている時間よりも「友達と喋っている時間」の方が楽しくなる時期がやってきます。あるいは、ゲーム機を囲んでの会話から、全く別の話題(アニメ、音楽、趣味の話など)へ移っていくこともあります。
人と関わる喜びがゲームの達成感を上回ったとき、ゲームは「唯一の救い」から「娯楽の一つ」へとランクダウンします。そうなれば、もう大丈夫です。フリースクールでの交流を通じて、社会の中で生きる自信が育ってきています。
この段階に来ると、フリースクールの外での活動(外出やイベント参加など)にも意欲的になってくることが多いです。
「将来」について自ら考え、行動し始める
エネルギーが十分に回復すると、子供は自然と「これからどうしよう」と考え始めます。学校に戻るのか、別の進路を探すのか、今の生活をどう変えるのか。自分自身で課題を見つけ、動き出す力が戻ってきます。
不思議なことに、この時期になるとあれほど熱中していたゲームをパタッとやめてしまう子もいます。「もう十分遊んだから、次は勉強する」「バイトを探すからゲームの時間は減らす」と、自分でケジメをつけるようになります。
ゲームばかりの時期をしっかり保障された子供は、自分の意思でその時期を終わらせる力も持っています。その力を信じて、最後まで寄り添ってあげてください。
まとめ:フリースクールでゲームばかりの時期は成長に必要なプロセス
フリースクールでゲームばかりしている姿を見ると、不安になるのは当然です。しかし、そこには必ず理由があります。子供たちはゲームを通じて、失った自信を回復し、社会と繋がるためのリハビリを懸命に行っているのです。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
・ゲームは心のエネルギーを回復させるための「休養」であり「避難所」である
・自分でやりたいことを選ぶ「自己決定」の経験が将来の主体性に繋がる
・ゲームを通じて論理的思考力やITリテラシー、社会性が養われている
・「依存」を疑う前に、生活の質や本人の表情、親子関係を重視する
・エネルギーが溜まれば、子供は自ずと次のステップへ動き出す
今は立ち止まっているように見えても、子供の心は決して止まってはいません。フリースクールという安全な場所で、好きなことに没頭できる時間は、将来振り返った時に「自分を救ってくれた大切な期間」になるはずです。
親御さんにできる最も効果的なサポートは、「ゲームばかりのあなたでも、ここにいていいんだよ」という安心感を与え続けることです。その温かな見守りこそが、子供がいつかゲーム機を置いて、自分の足で歩き出すための最大の原動力になります。



